ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 ところが就職してから、高く伸びていた鼻をポッキリと折られた。私より優秀な人が大勢いて、努力しても努力しても追いつけなくて。自分はなんて不出来なんだろうと、毎日泣いていた。

「2年間頑張ったけれど、心も体も限界で。社内制度を利用して、現実から逃げるようにアメリカへ留学したの」
 
 なぜひとりで、ペラペラと喋っているのだろう。
 頭の片隅でそんなことを考えながらも、静かに頷きながら聞いてくれるガクくんを見ると、もっと話したいという気分になってくる。

「会社に留学制度があるんですか?」
「MBA取得をサポートしてくれるの」
「えむ……?」
「Master of Business Administration……経営学の大学院修士課程を修了すると授与される、学位のこと」
「うわ、めちゃくちゃ流暢な英語ですね。かっこいい」

 英語力には自信があるけれど、こんなにキラキラした瞳で褒められると、なんだかくすぐったい気分。気恥ずかしさを誤魔化すように、またウイスキーを飲んだ。

「それで、2年でMBAを取得して帰ってきたんだけど。なぜか急に開き直れたというか、プライドを捨てて頭を下げて、周りにサポートをお願いするようにしたの。私はなにもできないバカだからって。そうしたら悩んでいたのが嘘みたいに、仕事がスムーズにいくようになって……」

 気がついたら、私はグラスを重ねていた。空になるたび、ガクくんが注いでくれたから。
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