ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 思ったより動揺している。と、とりあえず落ち着こう。

 ガクくんに親しい女性がいても、別におかしくないわよね。私だって、凌也みたいな異性の友人がいるわけだし。

 私と凌也も、お互い呼び捨てだもの。そんなに変なことじゃない。目の前で私に電話をするくらいだから、特別な関係というわけじゃないはず。

 悶々としながら歩いていると、気がついたら家に着いていた。

「……ただいま」

 空っぽの空間に、自分の声だけが響く。

 少し前までこれが普通だったのに。この日常が続いていくことに、なんの不満も不安もなかったはずなのに。どうして、こんなに寂しいの?

 全然当たり前じゃなかった。ガクくんが、毎日笑顔で出迎えてくれること。美味しい料理を作ってくれること。部屋を綺麗に片付けてくれること。抱き合って、触れ合えること。

 今日は私が「おかえりなさい」を言おう。そしてちゃんと、自分の気持ちを伝えるの。どちらにしても後悔するかもしれないのなら、当たって砕けてやる。

 薄い氷の上をビクビクしながら歩くなんて、性に合わないもの。それならいっそのこと氷を叩き割って、冷たい水の中を泳いでいくほうが私らしい。
 
 だけど、せっかく決意したのに、ガクくんはなかなか帰ってこなかった。30分経っても、50分経っても。
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