ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「最初は、買い物に行っているだけかなと思いました。だけど、いくら待っても帰ってこない。外が真っ暗になっても、次の日も、その次の日も……ずっと帰ってきませんでした。父に訊いても、お母さんとは一緒に暮らせなくなったと言うだけで」

 淡々とした口調から一変して、ガクくんの声が震えはじめる。そしてその瞳がみるみる潤んできて、私はほとんど無意識に、彼の体を抱きしめていた。
 
「さ、探しに、行ったんです、お母さんを。そしたら、僕が迷子に、なっちゃって……」

 ガクくんが、私の背中にしがみついてくる。そして肩を震わせながら、しばらく無言で泣きじゃくった。

 大好きな母親が突然いなくなる……どれだけ悲しくて寂しかったんだろう。小学校3年生なんて、まだまだ親に甘えたい年齢じゃない。

「……夜になって、隣町の公園のベンチで途方に暮れていたら、涼介さんが見つけてくれました」

 抱き合ったまま、ガクくんが鼻をすすりながら話し始めた。
 
「お母さんがいなくなった理由を知ったのは、その年末に親戚が集まったときなんですけど。浮気が離婚原因だったと僕に話した大伯父を、涼介さんが一喝したんです。僕のために本気で怒ってくれました」

 そっか。だからガクくんは、マスターを心から慕っているのね。
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