ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 家庭環境が分かって、少しずつ彼の心の最奥に近づいてきた気がする。でも、あともう一歩、踏み込みたい。
 
 ただ、ガクくんの心の傷に触れることになる。いくら私自身が受け止める覚悟でいても、痛みを思い出させるようなことをしてしまうのは……。

「まだ、訊きたいことがあるって顔をしていますねー」

 やっぱり顔に出てしまったのかしら。どうしてガクくんの前だと、ポーカーフェイスができないんだろう。

「なにが訊きたいのか、当てましょうか。両親の離婚理由でしょ?」
「ど、どうして」
「彩女さん、分かりやすいんだもん。答えは単純、母親の浮気です」

 ガクくんは、こともなげに言った。
 頭に浮かんだのは「やっぱり」という言葉。これまでガクくんは、不倫や浮気という言葉に異常なほど嫌悪感を示していたから。

「僕の記憶にある母は、明るくて活発な人でした」

 両膝を抱えて、まつ毛を伏せるガクくん。どういう感情なのかは、よく分からない。

「学校から帰るとおやつを作って待っていて、おかえりって出迎えてくれて。でも突然いなくなったんです。もちろんそれまでの間に、夫婦間ではいろいろあったんでしょうけどね。僕にとっては、本当に突然でした」

 受け止める覚悟を決めていたのに。胸が押しつぶされそう。しっかりしなくちゃ。私が苦しんでどうするの。
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