ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 三鷹駅近くにあるマンションの来客用駐車場に車を駐めると、私は大きく深呼吸をして気合いを入れた。

「突然帰ってくるなんて、どうしたの?」

 玄関で出迎えた母が、嬉しそうな笑顔を見せる。

 私のやるべきこと。それは、両親に自分の将来について話すこと。環境や状況は違えど、ガクくんと同じだった。

 隗より始めよ。人のことよりも、まずは自分の身近から手をつけなくちゃ。

「電話でも言ったけど、少し話しておきたいことがあって」
「もしかして結婚報告かなぁなんて、お父さんと話していたのよぉ」

 ……母のこういう「悪気のないひと言」が、これまで私を苦しめてきた。
 ううん、決して母が悪いわけじゃない。自分の意思をきちんと話さないくせに、私が勝手に傷ついていただけ。

 母には母の、私には私の価値観や人生観がある。それは口に出さなければ分からないのだから、もう逃げずにきちんと向き合わなくちゃ。

「おう」

 リビングに入ると、ソファに座っている父が短く言った。顔を見るのは久しぶりだけど、なんだか老けたように見える。

「お父さん、ごめんね。せっかくのお休みに」
「なにを言っているんだ。娘が自宅に帰ってくるのは、当たり前だろう」

 父はあまり余計なことを言わない。結婚報告かも、なんて盛り上がっていたのは、母だけだと思う。
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