ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「……ロッキンゼーにお勤めですか。そんな優秀な方が、どうして息子と」
「このお店で出会って、意気投合しました」
「そうですか」

 どことなく、ピリッとした空気を感じる。突然現れた息子の恋人を名乗る女に、警戒心を抱いているのかもしれない。

 この感覚、クライアントとの初回セッションと似ているわ。こういう雰囲気には慣れているし、それなりに立場のある年上の男性とも、臆することなく話せる。

「お店の中へ入りませんか? ガクくんと、話をしに来られたんですよね?」
「いえ……連絡せずに来てしまったので、帰ります。仕事の邪魔になるでしょうし」
「仕事中だからこそです。いまの彼の姿を、見てあげてください」

 わざわざここまで来たのだから、お父様もガクくんと対話をする気はあるはず。この機会を逃すわけにいかない。

「ガクくんは、ずっとあなたからの連絡を待っていました。いまの自分を見てほしいと言って、お店での仕事も小説の執筆も、全力で取り組んでいるんです。どうか、彼の話を聞いてあげてください」

 この大荷物。きっと、海外出張から帰ってきたばかりなんだわ。

 本当は、ずっとガクくんのことを気にかけていたのだと思う。そして一刻も早く話がしたかったから、連絡する間もなく、帰国してすぐにここへ来たんじゃないのかな。
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