ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「とっても美味しい。お酒も進みそうね」
「忖度なしですよ?」
「していないわよ、お仕事なんだから。お店のメニューとして出せるクオリティだと思う」

 私が言うとガクくんは一瞬安堵の表情を見せたけれど、すぐ緊張の面持ちに戻った。

「お、お父さんは……どう?」

 やっぱり、そちらの反応のほうが気になるわよね。
 
 ガクくんの視線を受けながら、お父様は黙々と料理を口に運んでいる。きっと、しっかり食べてから評価したいのね。とても真面目な方みたいだし。

「……いいんじゃないのか。見た目も味も、プロ並みだと思う」

 半分以上食べたところで、お父様が口を開いた。

「ほ、ほんと?」
「涼介の許可も貰ったんだろう?」
「うん」
「それなら、出してみたらいい」

 今度こそ、ガクくんの表情が安堵一色になる。だけど私は、少し違和感を抱いてしまった。
 ガクくんがお父様に言ってほしかったのは、そういうことなのかな。なんだか違う気がする。確かに、仕事をひとつ認めてもらえたわけだけど……。

 頭の中で違和感の正体を探っていると、お父様がスプーンを静かに置いた。

「雅空。お前が本当にやりたいのは、バーで料理を出すことなのか?」
「え?」
「確かに、ここでの仕事は頑張っているようだ。でもそれは、涼介の店だからだろう」

 お父様は、ガクくんの顔を真っすぐ見ている。
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