ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「きちんと先のことを想定して人生設計をしないと。人に寄りかかりすぎると、共倒れになることだってある。お前は、将来のことをどう考えているんだ」

 しばらく沈黙が流れる。全員が、ガクくんの言葉を待っていた。
 だけどガクくんは、唇を噛んで俯いたまま。いままで、この圧倒的に正しい言葉の前に、言いたいことを飲み込んできたのね。

 だけど世間一般の正解が、必ずしも自分の正解と合致するわけじゃない。それはガクくんにも分かっているはず。正論に負けず、自分の気持ちをちゃんと言葉にしてほしい。

「……お父さんの人生は、思い通りにいっているの?」

 ガクくんは、絞り出すような声で言った。

「お母さんが浮気して、離婚するのも想定内だった?」
「それは論点が違うだろう」
「結婚って、別れるつもりでするものじゃないよね。将来を考えてするんだよね。それなのに、離婚する人はたくさんいるじゃないか。どれだけしっかり考えても、思い通りにいかないことがたくさんあるじゃないか」
「なにがあるか分からないこそ、自立して」
「僕には!」

 お父様の言葉を遮って、ガクくんが声を荒らげた。

「僕には、甘えたいときに甘えられる人がいなかった。子どものころからずっと、誰にも甘えたらいけないと思って過ごしてきたんだよ」

 その瞳が、みるみるうちに潤んでいく。感情が昂っているのか、ガクくんの体は少し震えていた。
< 255 / 278 >

この作品をシェア

pagetop