ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 いますぐ駆け寄って、思いきり抱き締めてあげたい。だけど必死に自分の気持ちを伝えようとしているのだから、我慢して見守らなくちゃ。

「甘えるのが悪いことだなんて、僕は思わない。甘えられる人がいるって、すごく幸せなことなんだから」

 涙を堪えながら、懸命に訴えるガクくん。お父様は表情を変えず、じっとその姿を見つめている。

 甘えたらいけないと思っていたなんて、とても重い言葉だわ。
 母親の愛情を突然失った彼が、どんな気持ちで子ども時代を過ごしてきたのか……お父様は、どのくらい分かっているのかな。

「でも与えてもらうだけじゃいけないのは、よく分かっているよ」

 ガクくんが言葉を続ける。

「だから自分にできることをやろうと思って、彩女さんのサポートとか、お店での料理とかを頑張っているだけ。その先の人生設計なんて、正直よく分からないけど……ひとつだけ言えるのは、僕は彩女さんと、ずっと一緒にいたいってこと」
「結婚を考えているということか?」
「ううん。結婚は、いまのところ考えていなくて」
「あ、あの。それは私が望んでいないからで」

 ついつい、口を挟んでしまった。私がきちんと説明しないと、ガクくんが無責任だと思われてしまうかもしれない。
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