ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「時計を忘れてしまって、すみません」
「いえいえ、僕もバタバタ帰ってしまいましたから。そうだ、朝食は召し上がりました? よかったら、フレンチトーストを食べていかれませんか?」
「でも、奥様は? 早く帰られなくていいんですか?」
「大丈夫ですよ。朝イチで、一緒に病院へ行きましたから。だけど、ただの風邪とはいえ動くのが辛そうなので、月曜まで僕も休むことにしたんです」

 やっぱりマスターは優しい。そして、余裕がある大人という感じがする。
 ただの風邪だとしても、初めての妊娠は不安なことが多いだろうから、そばにいてもらえるのは嬉しいと思う。

「食パンの期限が明日までだったし、食べてくれると助かります」
「それじゃあ、いただきます。でも、お代はお支払いしますよ。昨日はウイスキーを頂戴したし」
「あ、僕が作る」

 奥でなにやらゴソゴソしていたガクくんが、割り込んでくる。なんだか嫌な予感。

「彩女さんに、料理の腕を確認してもらいたいんだよね。一緒に住むし」

 ……ほら、やっぱり。
 だしぬけにいうものだから、マスターは案の定、目を丸くしている。

「一緒に住むって……ガクと、彩女さんが?」
「彩女さん、仕事が忙しくて家事に手が回らないんだって。だから僕が、住み込みで家政夫をするんだよ」
「ちょっと、私は承諾していないでしょう」
「えっと……昨日、自分が帰ったあとに、なにがあったんですかね」

 そうよね、そうなるわよね。私だって、困惑しているもの。
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