ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「こら、ガク。彩女さんを困らせるんじゃない。店を手伝ってくれるなら、きちんとバイト代は出すんだから。それを貯めて、自分で家を探しなさい」
「でも、僕は」
「子どもじゃないんだから。あれも嫌、これも嫌で通るわけがないだろう?」

 ここで私が助け舟を出したら、彼の自立を阻害してしまうのかな。でもガクくんは、自立したくないと駄々をこねているのかしら?

 私にはそう見えない。根拠はないけれど、彼の中には明確な芯のようなものがある気がする。仕事柄いろいろな人を見てきているけれど、芯がある人とない人は、なんとなく嗅ぎ分けられるのよね。

「大学まで卒業させてもらったのに、働かず好き勝手しているなんて……甘えていると言われても、仕方ないんだよ」

 マスターから少し厳しい口調で咎められているガクくんの姿に、かつての自分が重なる。ああ、これはきっと「どうせ話しても分かってもらえない」と思っている表情だ。

 あのときの私と同じ。言いたいことがあるのに、言えない。口にすれば、否定されるのが分かっているから。彼もきっと、そんな葛藤を抱えている。理屈じゃなくて、そう感じた。

「あの、マスター」

 私は思わず、口を挟んだ。

「私の家に、ガクくんを住まわせてもいいですよ」

 ふたりが振り返り、驚いた表情で私を見る。
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