ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「さ、ごはん行きましょ! お肉が待っていますよ」

 今度は、いつもの無邪気な表情。作ることだけじゃなくて、食べるのも大好きなのよね。

 ガクくんは優しく私の手を引きながら、イルミネーションの中を歩き出す。

「ありがとう、ガクくん」

 なんとなく大きく見える背中に声をかけると、つないだ手を強く握って応えてくれた。
 ひんやりしていた手は、もう温かい。大きくて、少し骨ばっていて、ちゃんと男性の手なのよね。

 予約していた鉄板焼ステーキのお店に着いてコートを脱ぐと、ガクくんは珍しくジャケット姿だった。

「今日はオシャレなデートなので、涼介さんに借りたんです。細身のシルエットだから、少しサイズが大きくても気にならないでしょ」

 得意げに、そう話すガクくん。わざわざマスターから服を借りるなんて、よほど今日を楽しみにしていたのね。

 ガーデンのイルミネーションを望む席で、目の前の鉄板で焼かれた黒毛和牛とワインを、ゆっくりと味わう。そんな贅沢な時間を一緒に過ごせるなんて、とても幸せだった。
 
 お腹を満たして、じっくりイルミネーションを鑑賞してから帰宅すると、ガクくんは玄関に入るなりキスをしてきた。

「がっついて、すみません。でも今日はなんだか、無性に彩女さんと抱き合いたくて」

 そういえばガクくんは、「抱く」ではなくて「抱き合う」と言う。こういうところにも、彼の性格が表れている。
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