③ ぬいぐるみ

ミサキとクルム
四十路を迎えた2人は
昨年のクリスマスから交際を始めた

同棲を始める

今のところ
新居にある家具は
1つの椅子

「家具・・・」
ミサキは呟いた

「たった一つの椅子しかないからな」
クルムは中央の椅子を見つめている

これ程心を通わせやすい状況はない


「S HAMI」

🛋️家具🪑

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家具屋に着いたアベック
自動ドアを過ぎた2人に湧き立つ高揚感が
無意識に足を早くさせる

「あっカーテン」
「タンス」
「ベッド」
「時計もない」

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楽しい
家具見物は娯楽
購入
"しなくてはいけない"
場合は様相が変わるものだが

久方ぶりに訪れた家具屋に
つま先を支配されているから
片端から見る
値段を見て、右足親指に指示を出す

一通り見終わったか
ミサキが止まって、動かない

「どうした、美咲」
「あれに決めた」
「えっ、あれ?」
「あれ買って帰る」

「えっ」
クルム(いやそれは、)
言いかけた瞬間
ミサキの放つ決意の眼差しに
半開きの口は、帰った

APARTMENT

2人が帰ったその部屋には
生活利便性は加えられず、
持ち帰ったモノは
家具屋の仕業だけだった
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