④ 鯉

ダリアの花言葉に"移り気"がある

フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトの妻ジョセフィーヌは宮殿に咲かせたダリアの花をこよなく愛した。
訪れる人々に自慢をして、その花を欲しがる者には、当然、渡さなかった。
ダリアの花をワタクシの華と定めていた。

ある世話人の一人が愛人に頼みダリアを盗み出した。
世話人の家にはダリアが咲き、その花の華麗があたりに咲き乱れ出した。
ジョセフィーヌは怒りつつ、ダリアに興味を失った。

頓挫に関心を失った心を模様して"移り気"と花言葉は付けられた。

その美しさもさることながら、私だけの。

・・・

ミサキ

美咲

・・・

5月23日
クルムは熱田のある喫茶店の前を通った。
ある男の存在に気づいた。誰だったかな。
見覚えがあったが名前は思い出せなかった。
確か数年前のバーベキューに彼もいたような気がした。20数名で開催されたそのバーベキューには知らない人間もいたが、彼をそこで見たような、挨拶くらいはしたかもしれない。
慎重な性格のクルムは、朧気な記憶は一種の危険を孕んでるままに、彼の前を素通りした。



クルムとミサキは昨年の12/25に交際を開始した。
クルムの想いをミサキはしかと受け取った。
俗に言われるアラフォーたる年齢の二人は落ち着いた交際を経過していた。
5ヶ月をそう過ごして皐月の頭から同棲生活を営むこととなった。着実に二人の恋模様は前進した。

一月を経過したか。

同棲生活を始めてからクルムは下を向くことが多くなった。
'彼'に声を掛けることを嫌ったのも、地面を見眺めていたかったからかもしれない。

ミサキは朝に風呂に入った。
クルムは夜に風呂に入った。

ミサキの1日は風呂から始まる。
クルムの風呂は1日を締めくくる。
お互いにとってそれは習慣だから、その常を変えることは難しかった。

ミサキの風呂は真新しい水でなくてはならなかった。
夜風呂のクルムに、湯を抜いて、風呂を洗うことをウインクした。
さすれば、キレイな状態の風呂に真新しい水を注ぎ、ミサキの心も新鮮にスタートできる。

クルムは単純に嫌だった。
風呂に入った後に、風呂を掃除するのだ。

馬花の花は咲いた

"優しい"クルムは下を向いた。水が渦を巻いていく

・・・

性生活を認めてもらえなかった
ミサキはその身体を許さなかった
交際を始めて半年
同棲生活をすれば流石に認められると思っていたが、
女は男を許さなかった


なぜか?わからない

・・・

ミサキはこの言葉をよく口にした
"私は一途なんです"
特に恋人がいない時には、四方に"一途"は飛び散った。

クルムは鰯だった

鯵くん、鰯くん、鯛くん、鯖くんに一途を投げておく

鰯くんは自分に向けられた一途に食いつき、告白した

DAHLIA

美咲の鯉模様はいつも移り気だ

竿はまだ垂れている

#ミサキ
#クルム
#恋
#20240605

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