nonsense magic
そんな男を色のない瞳で見下ろす────のは
「この子、おれのオンナ」
いつの間にか冷たくなった指先に、あつい体温が絡められる。
ぼうっと声に聞き入っていたから、その内容を理解するのに時間がかかった。
……聞き間違い?
あまやかなフレーズで囁かれたセリフに誘われるように顔をあげれば、無機質な瞳に捕まって、どくん、と心臓が鈍い音を立てた。
「だから、おれに無許可で触んないで。……ね?」
さっきまでの冷めた表情とは違う、妖しい艶やかな笑みを纏った彼は、するりと指先を絡めてくる。ぎゅっと隙間なく埋められて、触れあう表面の熱さに驚いた。
「(……このひと、体温高いな……)」
そういえば、呼吸も少し荒い気がする。顔も少し赤いし、もしかして、体調が悪いのかもしれない。
見上げるような形で見つめあうまま、それを問いかけようと口を開こうとした瞬間、───────……まあるい形をしていたソレが、その瞬間、静かに細められる。少しの間見つめ合うと、ぐらり、とそのひとの瞳が歪んだ気がした。
「─────……っ、」
いつの間にか後頭部に差し込まれていた手のひらに力が込められて、引き寄せられるように、身体が傾いて。
重なったのは、一瞬。
瞬きを落とす間もない、ほんとうに一瞬の出来事。