nonsense magic
───────……くちびるに触れた、熱。
指先の熱、唇に重なった熱、それぞれが身体を巡るような感覚に、動けなくなる。
リアルな感触、つつ、と指で触れてみると、微かに温度は残っていた。
「失せるのはおまえ、ね」
ぞっとするほどの冷たい声を浴びせたあと、指先を絡めたまま、男の耳元でなにかを囁くように告げたそのひと。この世の終わりと言わんばかりに悲壮な顔つきになった男は、小走りで逃げていった。
ぼうっとその姿を眺めていたけれど、途中で目が覚めたみたいに、さっきまでの出来事が頭の中に流れていく。
……現実に起こったとも思えないくらい、ぜんぶが非現実的。
「……あ、の、あなた─────、……っ!」
突然、ふらりとそのひとの身体が横に傾いた。
慌てて受け止めるけど、男のひと1人を女のわたしが支えられるわけもなく、一緒にずるずると地面に座り込んでしまう。
「っだ、大丈夫ですか……?!」
「……ん、わるい、……平気」
「、す、すこしだけ触ります」
失礼します、とこころななかで呟きながら額に手を当てれば、じわじわと伝ってくる体温。明らかに平熱ではないそれに顔を青ざめる。
……相当の高熱だ、どうしよう。