幼馴染はお医者さん


◯きりサイド◯

愁くんが家に帰ってくると思わなかった。
久しぶりに会ったけど気まずい。

怒った愁くんはやっぱり怖くて嫌い

「きり」

自分家の玄関で鍵を開けていたら
愁くんが家から出てきて私の名前を呼んだ

また怒られると思ってすぐ家に入った。


...ピンポーン

すぐにインターフォンが鳴った
相手はわかっている

「きり、ちょっと話がある、でてきて。」

私は話なんかない。

吸入器を借りようと思っただけ。
なんでそのタイミングで愁くんが帰ってくるの。

「きり、いま話しないならもう俺はきりの病気と向き合うの一切やめるわ。他の先生に引き継ぐ。幼馴染に戻ろう」


「...他の先生」

「とりあえず話をしよう。」

「愁くん。病院に戻るって約束破ったのは私が悪かった。
でもお医者さんの愁くんは嫌なの。大嫌い。幼馴染に戻ってほしい」

「きりの話はわかった。
聞きたいこともあるし顔を見て会話がしたいからあけて」


優しい愁くんの声で思わず玄関をあけた

「お邪魔します」

愁くんが家に入ってきて
靴を脱いでリビングに行った

「おばさんはまだ帰ってきてないの?」

「うん」

「きり、今日仕事は?」

「水曜日だから休み」

「通院の日だもんな」

「...」

毎週、水曜は通院って決まってる。
わざわざ言ってくるのが意地悪な愁くん

「俺に何を借りにきたの?」

「...」

「今日近くのクリニックに行ったよね?
きりが自分から病院行くなんて何しに行ったの?」

「なんでしってるの?」

「俺は何でも知ってる」

「...」

「吸入がもうなくて...
発作が出たら大変だから
愁くんが持ってるのを借りようかと...」

「えっもうないの?
こないだ3本渡したよね?」

私が約束を破る前に吸入器を
たくさん処方してもらったのに
3週間くらいで使い切ってしまった

「全部使った...」

「なんで?そんなに発作が出たの?」

「...うん」

「ダメだ。検査いこう。絶対悪くなってる」

「嫌だ。」

「きり!」

「嫌だ!かえって。
愁くんがそうなるから本当のこと言いたくないし病院も行きたくないの。
私は治す気ないって言ってるでしょう
ほっといてよ
はぁ...はぁ...」

だめだ
発作が出る

愁くんの前で発作がでるとまた医者になる。

急いで家を出た。

「きり!だめ!」

玄関前の道路で腕を掴まれた。

「...はぁ
いや。...はぁ...はなして」

「吸入、取ってくる。
とりあえず動かずここにいて。
動くなよ」

愁くんが走って自分の家に戻った

吸入もってるなら
早くちょうだいよ。

少し家の前の道路で座って待ってたら
愁くんが戻ってきた

「吸え」

私の口に吸入器をあてた

...シュ ...シュ

「...ありがとう」

「病院に行こう、車出すから」

「...はぁ...嫌だ」

「まだ喘鳴がひどい。
治ってない。病院いってちゃんと治療しよう」

「...だから
...嫌だって」

「俺はきりの治療しない。
幼馴染として連れて行くだけ。
他の先生に頼むから。
だからお願い。
命落とす前に病院に行って。」

「...
大袈裟だよ...」

「本当に危ない。」

「...行かない。
病院に連れてったら...一生、愁くんと...話さないから」

「何でそんなこというの...」

愁くんは今まで見たことないくらい悲しそうな顔をした

「外にいても酷くなるからとりあえず家に入れよ」

それだけ言い残して
愁くんは自分の家に入って行った。

ちょっと言いすぎた。
愁くんは私のこと思って言ってくれてるのに...

少し反省した。

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