第一幕、御三家の桜姫

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「桐椰の兄貴、だったかな。もう大学生だったけど、すっ飛んできて牟田先輩に色々とね……。もちろん桐椰に何も言わないように口止めはされたみたいだけど、あの日以来、牟田先輩はすっかり大人しくなったよ。それこそ、桐椰に黙って殴られるくらいには」

「……なんで、それをこんなタイミングで話したの?」

「いつかは知らなきゃいけないことだろう。今まで黙ってたのは、あの三人が、事実を受け入れられる精神状態じゃなかったからだ」


 突然幼馴染が死んだことによる困惑、混乱、絶望、そしてそれを圧倒する自責の念。明確に定義することさえできないたくさんの感情が入り交じった彼らの、半狂乱ともいうべき精神状態。


「去年の有様を知ってたら、生徒会の書類を盗み見してるのなんて、可愛いもんだよ。冗談抜きで、アイツらに逆らう連中なんていなかった。実際、桐椰は雨柳のことで煽られたとはいえ、十人近い生徒を半殺しだ。……半年近く経ってやっと落ち着いたけど」


 何も知らないけれど、それが本当だというのなら、あの手紙を渡したところではいそうですかと納得はしなかっただろう。


「……透冶くんの手紙を準備室に置いたのは、鹿島くん?」


 鹿島くんは「ま、そうだな」となんでもないように頷く。


「……なんで?」

「雨柳の話をするのは御三家(きみたち)がBCCに勝ってからだと決まっていたのに、か? 結局あれは生徒会と御三家の人気投票だからな、御三家が勝つものだと、俺は最初から思ってた。だったら渡しておいていいと思っただけだよ」


 ……やっぱり、BCCは御三家が勝っても仕方がないことが分かっていたのか。


「……じゃあ、なんでBCCなんてものを用意したの? あんなものがなくても、落ち着いたあの三人に話せばそれで済んだのに」

「あの三人はあの三人だけでいる限り、落ち着く可能性なんてなかったからだよ」

「……どういうこと?」

「君は、御三家と話していて何も違和感を覚えなかったのかい?」


 違和感? 確かに何度かいくつかの違和感を覚えた記憶はある。例えば、どうして透冶くんの死から半年も経っているのか、とか。そしてその答えは、さっきの話によれば、透冶くんが死んだ直後の三人は、互いに関係を絶っていたから。

 他の違和感といえば……。


「あの三人は互いに依存しすぎていた」


 依存――その単語にハッと気が付く。そうだ、あの三人に他の友達がいないのではないかと考えたときに感じたものの正体はそれだ。
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