白雪姫は寵愛されている【完】
「…千雪さんは優しいですね」
頭を上げた昴くんが微笑む。
「わ、わたしは…優しくないです!」
私よりみんなの方が優しい。怖がらせないようにって配慮してくれてるし、今だって傍に居てくれる。こんなにしてくれていいんですか?って思うぐらいです。
…仁くんはもっと優しい。
怖かった声が今では優しい声になった。黒いオーラは滅多に出なくなって、忙しくても…メッセージを送ってくれる。
前よりも返信が減ったけど…必ず、『おはよう』と『おやすみ』は送ってくれる。今朝も『寒くなってきたから、暖かくして来い』って送ってくれた。
思い出して、胸がきゅっとした。
そういえば…あの日から中々会えてない。
学園祭の後、仁くんとは何も話せてない。
…学園祭。
唇に軽く触れた。
「もしかして、仁の事を考えてますか?」
体が飛び跳ねた。
な…なんでわかったんだろ…。
「…唇、どうかしたんですか」
「え!?えっと…その、ガサガサし、しているので…」
昴くんの指が唇に触れた。
「してませんよ」
「え、えっと…り、りっぷを塗ったからで…」
「そのような仕草はありませんでしたが?」
「み、見えないところで…」
「……仁にキスでもされましたか?」
ドキッ!!
「図星…ですか」
言われなくても分かってる。
今顔が真っ赤になってる事ぐらい。
すごく…ドキドキしてるから。
「…仁の事、好きなんですか?」
す、き?
首を左右に振った。
「そ…そんなことありません!」
仁くんに迷惑をかけるような事、思いません。
私のような人が厚かましすぎます。
私はただ…傍にいれるだけで…。
「ハハ、そんなに否定しなくても…分かってますよ」
昴くんの触れる指が私の頬を摩る。
「…今、どう思ってますか?」