白雪姫は寵愛されている【完】


離れた先に見えたのは、仁くんだった。


「なに、してんだ」


怒ってる…?


眉間にしわが寄っていた。
口調も少し怒ってる気がする。


「…仁、終わったんですか」


昴くんが近づいた。



「どうでし───…、」



鈍い音がした。



「っ!?す、すばるくん!」



昴くんが殴られた。

倒れた昴くんに駆け寄った。
唇から血が出て、痛々しい真っ赤な頬。

ハンカチで抑えようと、ポケットに手を入れると同時に掴まれた。



「じ、んくん?」

「何してた。ここで。俺がいない間に」



握られた手首が痛い。



「仁、やめてください。千雪さんは何もしてませ…」

「黙れ」



ゾクッ…、
強い、殺気。

昴くんもその殺気に思わず黙り込む。



「俺は千雪に聞いてる。お前には聞いてない」


「っっ…、僕が千雪さんに手を出したんです」


「ならどうして嫌がらない。押し返すぐらい出来ただろ、千雪」



声が出ない。
頷くことも、出来ない。

こんな殺気初めて感じた。




「お前も満更でも無かったって事か?」




ち、違います。
私が…力が弱かったから…。


喉まで出かかった言葉。
それが声に出せない。

代わりに出てきたのは大きな涙だった。


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