白雪姫は寵愛されている【完】
「っ…仁!いい加減にしてください。僕が勝手にしただけです。千雪さんにそんな力もない。もう分かっていることでしょう?その手を離してください」
「お前に関係ない。俺は千雪に聞いてる」
「っ…わ、わたし…」
「なんだ?はっきり言え」
ビクッ!
怖い、怖い。
どうしよう、声出ない。
込み上げてくる涙が次から次へと伝い、流れて落ちていく。
「いい加減にしろって言っただろ、仁」
昴くんが仁くんの手首を掴んだ。
私の手を掴む仁くんの手が段々と離れていく。
す、ばるくん…?
「千雪さんに当たってなんになる。泣いてるのが見えないのか?」
「───────…黙れ、」
「僕に取られたくないと?…こんなに泣かせておいてか?」
「………っ」
「仁、お前がそんな態度なら…僕が貰う」
昴くんに手を引かれた。
「昴く…!」
「行きましょう、千雪さん」
そう言って、手を引き歩いていく。
っっ…仁くん。
立ち尽くす仁くんの横を通り、部屋を出ていく。
先を歩く昴くん。その後を追う。
…戻らないと。
仁くんに謝らないと。
私がちゃんと意思表示をしないから…こんな。
「…千雪さん?」
立ち止まった。
昴くんも立ち止まる。
「っ…、じ、仁くんの所…戻らないと」
二人があんなに怒るとこ始めて見た。
怖かった。でもそれ以上に…悲しかった。
謝らないと…私が原因だから。
振り返り戻ろうとする私の腕を引かれた。
体制を崩しながら、昴くんの胸に飛び込む。