白雪姫は寵愛されている【完】
「行かないでください」
耳元で声がする。
「で、でも…仁くんに謝らないと…」
「あの状態の仁に?さっきも声が出なかったようですか?」
「そ、それは…、」
確かにそうかもしれない。
でも…私が原因だから…。
仁くんに謝って、昴くんと仲直りして…今まで通り仲良く…。
「千雪さん?…泣いてるんですか?」
私がもっと強い女の子なら良かった。
泣き虫で弱くて、何もできないだなんて。
昴くんが目尻の涙を拭う。
殴られた頬が真っ赤になっている。
…痛そう。
ハンカチを出して頬を抑えた。
掴まれた手首が赤くなっていた。
「ああ、突然だったので。歯を食いしばるのを忘れました」
ニコッと笑った。
…仁くんも手が赤くなってた。
殴られる方も、殴る方も…痛いんだ。
ハンカチを持つ手に昴くんの手が絡まった。
吃驚して離そうとしたけど、これも離れなかった。
「……じ、仁くんの手も赤くて…」
手当しないと。
「こんな時まで仁ですか?
「…え?」
「僕の方が重症ですよ?殴られた方が痛いんです」
「で、でも…」
私からすればどちらも痛いと思う。
あんなに赤くなるだなんて…。
「千雪さん、こっちを見てくれませんか?それとも…腫れた顔を見るのは辛いですか?」
「そんな事は……、」
昴くんの瞳に私が映ってる。
…っ、痛そう。
頬に触れると、痛そうに眉間にしわを寄せた。
「あ…ご、ごめんなさ…!」
離そうとするしたが、その上に昴くんの手が乗った。
「僕は千雪さんの事が好きです」
そう、言った。