白雪姫は寵愛されている【完】


「おい!お前等はどっちの味方だよ!?」


唇から血を流すピンク髪の人は全員を指差した。青髪の人は興味が無さそうに大きく欠伸をして、緑髪の人は女性の身体を触っている。

誰も賛同する事も無ければ否定する事も無かった。
ピンク髪は顔を真っ赤にして仁くんに向かって指を差す。



「っ…おい!ここでの喧嘩は禁止にしてたはずだ!その為の集会所だろ!それを破ったらどうなるか分かってんだろうな!?」



痛々しい顔に私は顔を逸らした。


「聞いてんのか!仁!!」


大股で駆け寄るその人が仁くんの胸倉を掴む。
だけど仁くんは涼しい顔で。


「虫が付いていた」


そう言って手の甲を見せた。


……む、むし…?


私の位置からは見えない。
だけどピンク髪の人はその手を凝視する。



「クッ…ハハ!虫か…虫なら仕方ねぇよなぁ?」



笑い出したのは緑髪の人。
金髪の女性達もクスクスと笑っている。


「はぁ!?おい何言ってん、」

「いい加減黙れよお前。うるせぇんだよ」


そう言ったのは青髪の人だった。わなわなと怒り出すピンク髪の人は、今度はその男に向かって騒ぎ出す。


その隙に、


「…颯太。千雪を連れて出て行け」


と、言った。


「うっす。白藤行こう」

「じ…じんくん…」


私のせいでこんな…、


仁くんは振り返ることはなく、


「行け」


そう言った。

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