白雪姫は寵愛されている【完】
太ももを撫でられる。
薄いパジャマ越しからの感触。
首筋に伝わる朔也くんの息遣いと強張る身体。
その手が徐々に太ももから上へと上がり、ズボンの中へ入る瞬間。
「…白雪?」
朔也くんは動きを止めた。
溢れ出した涙で顔がぐしゃぐしゃになり、鼻を啜った。
「どうしたの?何処か痛い?」
慌てて私の涙を拭った。
何度もどうしたのかと聞いてくる。
嗚咽を漏らしながら言葉を紡ぐ。
「……っ…いや……」
また朔也くんに何かされるかもしれない。
首を絞められるかも。
殴られてしまうかも。
だけど…そっちの方がマシなんて思ってしまう。
朔也くんが私の額にキスをすると、手を離してくれた。上から降りて私の隣に寝そべる。
「ごめん。白雪…少し急ぎ過ぎたね」
強く抱きしめられた。
「白雪が上手にキスが出来るようになったら、その時に先へ進もう。もう急かさないよ。
…大丈夫。時間は沢山ある。
もう俺達には縛られるものはなない。
俺と白雪は恋人同時なんだから──────、」
恋人…。
そうなれたのが仁くんだったなら。
触れられたのが仁くんだったなら。
私は──────、
嫌だと言ったのだろうか。