白雪姫は寵愛されている【完】
また…私の知らない朔也くんを知った。
今までずっと知らなかった事。
私の知ってる朔也くんから、知らない人になっていく。
ピピピ、
突然の着信にビクッとした。
この音……、
宏くんとか美琴さんが出る時の…。
携帯をジッと見つめてから、サイドテーブルに置く朔也くん。
ずっと鳴り続ける着信音。止まったと思ったらまた鳴り始める。
もし宏くんや美琴さんなら、すぐに外に出るはず…。
時刻は21時過ぎ──────。
マスコットを直すには丁度いいかもしれない。
朔也くんは夜に出たら早々帰って来ない。
…昨日は帰って来たけど。多分大丈夫。
家を出て行った後に布団の中でマスコットを直して…。
「なぁーに?」
どうして電話に出ないの?
「…私の事は気にしないで…えっと、電話出ていいよ?」
笑顔でそう言うと、不意にキスをされた。
あまりに突然の事で押し返そうとした手。
朔也くんはその手を握り返し抱き寄せる。
「んっ…、」
何度か角度を変えてから離れた唇。
「可愛い顔で俺を見るから」
朔也くんは笑った後で私の身体を強く抱きしめた。