白雪姫は寵愛されている【完】
『……おせぇんだよ!』
「お前より優先する事があったんだよ」
暫くして隣から大きな美琴さんの声がした。
朔也くんがようやく電話に出たのだ。
朔也くんが行くまで寝たふりをしてみよう。もしバレたら、眠れなくて目を瞑ってたって言おう、そう決めていた。
だけど上手くいったみたい。
朔也くんは美琴さんと話を続ける。
「それで?何の用だ?」
『ん、ああ。──────八神が生きてる』
……じん、くん。
見えないようにぎゅっとシーツを握った。
「俺は放置しろと言ったはずだ。…間違えるな、とも」
──────え?
『したっての。あの公園のゴミ捨て場みたいなとこに置いといた。外から見えにくいようにしてな。だが…近くに朱雀幹部がいたらしい。八神を連れて病院に行ったんだと』
「チッ…死にぞこないが」
どういう事?病院…連れて行ってくれるって言ったのに。放置って…?私……それじゃあ、何のために──────、
「ジンは何処にいる」
『中央病院、302、一人部屋』
「……分かった」
電話を切る音がして吃驚したが、バレないように寝たふりのまま。
髪に何か触れる。
多分朔也くんの手。
「もう二度と、ジンと会わないようにしてやるな。俺の白雪に許可なく触れたんだ。──────容赦しない」
そう言って部屋を出ていった。