白雪姫は寵愛されている【完】
視線が痛かった。タクシーに乗った時も、病院内を歩いている時もずっと視線を感じていた。
だけど、彼に会えると思ったから。
──────我慢出来たんだと思う。
……301…302、あった。
302と書かれたドアの前に立つ。
心臓がはち切れそうなぐらいドキドキしてる。
その場で深呼吸をし、ノックする。返事は無い。
「…し、しつれいします」
ゆっくりスライドしながら開けた。
目に入ったのは、寝ている仁くんだった。
近づき手を伸ばす。
触れた頬が暖かい。
涙が落ちる。
「…よ、かったです…よかった…」
きっと神様が助けてくれたんですね。
ありがとうございます…彼を助けてくれて。
時計が目についた。家を出てからもう二十分経っている。
もう行かないと。
帰って来るかもしれない。
ポケットから縫い合わせたマスコットを出す。見つからなかった分は私のマスコットを繋ぎ合わせて作った物。
その下に手紙を置く。
朔也くんの事、麒麟が朱雀の事を倒そうとしている事…それからもう会えない事。
この手紙に全部書いた。
朱雀の人が来たらきっと気付いてくれるはず。