白雪姫は寵愛されている【完】
「は?なんでお前がそんな事決めるんだ?」
「今さっき白藤さんが言ったんすよ」
「……本当か?千雪ちゃん」
「っ、は…い」
腕が痛い。余計な事を言うなと言われているようだ。
「難波さん、俺白藤さんの事送ってきますので」
難波先輩の隣を通り過ぎようとした時、反対の手を引っ張られた。立ち止まる私と一緒に止まる美琴さん。
「俺が送る」
「いいっすよ。白藤さんは俺に送迎頼んだわけですし。そうっすよね?」
っ…、
無言で頷いた。だけど難波先輩は手を離そうとしなかった。
「千雪ちゃん。話がある。少し待ってくんねーか?」
「難波さん。白藤さんは急ぎの用があるみたいなんで」
「お前に聞いてねぇよ」
殺気立つ難波先輩と同じように殺気立てた美琴さん。
「お前は先に下で帰る用意しとけばいいだろ?それとも…千雪ちゃんと俺が一緒にいるとまずい事でもあんのか?」
「そんな事…ないですけど…」
バレるわけにはいかないのだろう。美琴さんはしどろもどろに答える。
「千雪ちゃん、いいか?」
私は一度美琴さんの顔色を伺ってから頷いた。
勿論、余計な事は言うなという圧を感じながら。
「─────────それで?今まで連絡が取れなかったワケは?」
取らなかった、ではなく取れなかった。
難波先輩は何か感じたのかもしれない。
「公園で何があった?」
「何も…ありませ…」
「嘘付くのが下手だな。千雪ちゃん」
ポロ…、
落ちた水滴。涙。
我慢しなきゃいけないはずなのに。
安心して溢れてきて…。
「ッ…ごめんなさ…私が…私のせいで…!」
仁くんに怪我をさせてしまった。
手を引かれ先輩の体に包まれる。
「…ゆっくりでいい。話してくれ」
少しずつ、今まであったことを話した。