白雪姫は寵愛されている【完】
「気安く名前を呼ぶな」
朔也くんの低い声が響く。
身体が震え、仁くんにしがみついた。
「白雪、今来れば許してあげるよ…おいで?」
「聞かなくていい。行くな」
「俺は白雪に言ってるんだ。お前にじゃない」
「奇遇だな。俺も千雪に言ってる」
睨み合っている。この場所だけ別の空気が流れているみたい。
私が…私が仁くんに会いに行かなければ…こんな事にはなってない。…私のせいで。
「じ、んくん…私…」
「白雪、」
ビクッ
「言ったよね?何があっても俺を選ぶって」
前に聞かれた言葉。
思わず頷いたあの言葉。
朔也くんの左手の薬指にキラリと光る物が見える。
私と同じシルバー色の指輪だった。
「俺がどんな思いで傍に居たのか教えたはずだよ。それなのに俺以外を選ぶの?白雪には罪悪感とかないのかな。俺に対して。今まで守ってやった男を放置して…最低だと思わないのかな?」
「っっ…ごめ…なさい…」
「謝るより行動で示してくれる?」
手を広げた朔也くん。
思わず前に出ようとした私を制したのは仁くんだった。
「千雪を探していたのは…こうやって脅す為か?」
”麒麟が白藤千雪を探している。”
集会で言われた事だった。
「そんなわけないだろう?俺は白雪の事を考えてる。怖がらせたりしないよ」
「…千雪は今震えてる」
「俺に会えて嬉しいだけだよ。お前から離れたくて仕方ないはずだ」