白雪姫は寵愛されている【完】


どうしよう…どうしたら…。
私の感情だけでここに居ていいの?


「や…やっぱり私…朔也くんの所へ…」


仁くんが私の手を握ってくれる。
さっきまでの感情が嘘みたいに消えていく。


「ジン、お前のせいで全部台無しだ」


ガンッと大きな音がして顔を上げると、眉間に皺を寄せた朔也くんがいた。鉄パイプが叩きつけられて折れている。


「どういう事だ?」

「白雪は怖がりだから絶対にお前等と関わるはずがないと思ってた。だから渋々あの学校に入学する事も承諾した。それなのに…お前が白雪をたぶらかして俺から離したんだ。

俺だけが白雪の心の拠り所だったのに。俺だけが白雪の存在を知っているだけで良かったのに…。

どうせ顔だろ?白雪は綺麗だからなぁ
お前は白雪の顔だけが良いんだろ?」


仁くんは私の顔を一度見て頬を撫でた。


「三年前、怯えながらも唯一俺に手を貸してくれたのは…白藤千雪だった。一目惚れだった。千雪の顔は探す為の目印にしてたに過ぎない」

「…は?」

「本の話をする時に一生懸命面白さを伝えてくれようとする千雪が可愛い。思ったよりお金が掛かって驚く千雪は愛らしい。甘い物を前にすると目を輝かせる千雪も、手先が器用で売り物みたいなマスコット作る千雪も。素直で純粋で勇敢で怖がりで…、」


頬を伝い、落ちた涙を拭ってくれる仕草。
──────ああ、やっぱり私は。




「そんな千雪が大好きだ」




仁くんが大好きです。

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