白雪姫は寵愛されている【完】
終章

狂愛


目が開く、白い天井が見える。
電子音も聞こえてくる。

ぼんやり覚えているのは刺された時の事。でもその後はよく覚えて無い。けれどここが病院だという事だけは分かった。


……朔也くんと…仁くんは?


ガシャン!


何かを落とす音がし目線を送った。
そこには目を見開く朔也くんがいた。


慌てて駆け寄ってきた。


「白雪…よかった…ほんとに…、」


泣きそうな声。震える手。私に何度も謝る姿。


「ごめん…ごめん、俺…」


大きくて、暖かい手…この手で、ずっと一人で、私を守ってくれていたんだ。



「動かなくていい!三日も寝てたんだ。まだ寝てて?ずっと俺が傍に、」



手を伸ばし、頬を包む。


「怪我は…ないですか?」

「…無いよ。俺は無い」


嘘ばっかりだ。

頬の傷テープは?切れた唇は?赤くなったままの拳は?
──────怪我ばかりじゃないですか。

そうやって何度も嘘で私を安心させてくれていたんですね。

気が付かなかった自分が恨めしい。何度もチャンスがあったはずなのに、見て見ぬふりをした自分が。



「…辛い思いばかりさせて、ごめんなさい」



私のせいで。ずっと。

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