白雪姫は寵愛されている【完】


「……辛くない。俺には白雪がいるから…全然辛くなかった」


朔也くんの手が私の手と重なった。
私は左右に首を振った。


「ずっとそう言って…私に心配を掛けないようにしてくれたんですよね?」

「違う。違うよ。俺は…白雪を愛してるから。耐えられたんだよ」


手の平にキスをし微笑む。


「これからもずっとそうだよ。俺は白雪さえいれば…白雪がいれば後は何も要らないよ」


身体が軋む。痛みが強くなる。
……こんな思いをずっと。

朔也くんはずっとこれを隠しながら──────、

きっと私が居たから。


「もし…、私が居なかったら、朔也くんはきっと。もっと…」


自由になれた。辛い思いも我慢する事もなかった…、



「違う!!!」



肩を掴まれた。



「俺は白雪がいたから耐えられたんだ!俺は…白雪が…いたから、」



目を潤ませる朔也くんの目尻に触れる。
泣いている朔也くんを見るのは初めてかもしれない。



「白雪…俺と一緒にいてよ。好きになってよ…俺だけを愛して…」



──────分かっています。

白藤千雪が一緒にいるべきなのが誰なのか。
頭の中では分かっていることだった。


「白雪?泣いてるの?」


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