白雪姫は寵愛されている【完】
最初に浮かぶのは誰か、次から次へと思い出す彼の事。
「…私……、朔也くんの事、」
触れている指先も語りかける言葉も。
全部が──────、
”違う”って。
言っているんだ。
「好きになろうとしたの…。嘘付いて、」
「っ、知ってるよ。だってそうさせたから。でもキスしてくれて、抱きしめてくれたよね…?」
「……うん。そうしないとって思ったから…、」
慌てる朔也くんが手を握ってくる。
「やめろ…お願い…、お願いだから、俺と居よう?」
さっきよりも力が強くなる。
「俺を拒絶するな…白雪、」
嫌な思いも沢山した。
怖かった、逃げたかった。
「嫌いになんてなれない…だって朔也くんは私のお兄ちゃんですから、」
それなのに、嫌いになんてなっていない。
「…ッ、嫌だ。白雪待って」
抱きしめてきた朔也くんは震えている気がした。
「俺は何でも出来るよ?白雪の為なら人殺しも出来るし…、欲しい物もあげら、れるよ。嫌なら…触ってほしくないって言うなら、成人まで我慢…白雪が良いって言うまで触れないから…、」
もし、あの人と出会う前だったら…。何も知らなかったら、きっと受け入れていたのかもしれない。
体を押すと、離れていった。
朔也くんの目を真っ直ぐ見る。
私に泣く資格なんて無い。
ポタッ、
白いシーツに落ちた雫。
「ごめんなさい」