白雪姫は寵愛されている【完】
***



右眼に眼帯を付ける阿久津と、顔中絆創膏だらけの碇が車の中で待っている。待っているのはサクヤのようだ。


「んぁ、おかえり~」


サクヤは黙って車に乗り込んだ。
窓の方をぼんやり眺めてる。



「サクヤ、もう俺は朱雀の中戻れねーからな?」

「あーあ、ミコトが失敗するから~…」

「俺じゃねーだろ」


阿久津と碇が言い争っているが、サクヤは上の空。


「次はちゃんと繋いどけよ、サクヤ」


碇が溜息交じりに言ったが、サクヤは鼻で笑った。


「次…か、」

「ちょと、さっきから何しけてんの?」


見かねた阿久津が話しかけた。
サクヤが阿久津を指差した。


「今日からお前が総長な」

「「は?」」


突然の宣言に目を見開く二人。


「ちょ…と!何したのさぁ!」

「……すげぇ急だな」



サクヤは直ぐに外を見る。
頬杖を付きぼんやり眺める。


「まあ別にいいけどぉ…所で、千雪は?まーだ入院しなきゃないの?」


今日連れて帰ると言っていたはずのサクヤ。

しかし来たのはサクヤただ一人。
車も既に発進してしまっている。



「………綺麗だった」



呟いた。



「なにがぁ?」



阿久津が溜息をつく。
サクヤはまだ窓の外に視線がある。




「アイツを想って泣いた白雪が……今までで一番綺麗だった」




窓に映るサクヤが静かに目を閉じる。瞳から流れた雫は、頬を伝い落ちていった。




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