白雪姫は寵愛されている【完】
──────消毒液の匂い。


誰もいない保健室。連れて来られて早々にベッドの上に乗せられた。



「…怪我、」



呟く八神先輩の言葉で思い出す。
そう言えば転んで怪我をしたのだと。


…忘れてた。あんなにじんじんしてたのに…どうして忘れていたのかな。


それぐらい切羽詰まっていたと言う事かもしれない。



「千雪ちゃん。足、出して貰える?」



難波先輩の言う通りにする…が、何故か八神先輩に止められた。



「…や、がみせんぱ…?」

「俺がやる」

「はいはい。分かったての」



難波先輩の手に持っていた消毒液と包帯らしきものなどを奪い取る。



「…染みるかもしれない」

「は、い。大丈夫です」



私の足に触れる手に熱が帯びている気がする。
──────違う。きっとこれは私の熱。


朔也くん以外の男の人に触れられた事なんて無かった。それに足なんて触れらたこと無い。朔也くんでさえ。

だから緊張してるんだ。
ドキドキするのもそのせい。


「大丈夫か?」



テキパキと終えた手当。
かなり慣れているように思えた。



「はい…。ありがとうございました」



先輩達は近くの椅子に座り、二人同時に頭を下げた。


「気づくのが遅くなってごめん。…こうなったのは俺達のせいだ」

「な、難波先輩…!頭を上げてください…!」


助けてもらったのに…どうして謝るんですか?先輩たちが来なかったら、私は今頃どうなってだろう?そう考えただけでゾッとしてしまう。

───────それに。こんな所を誰かに見られたら…また何をされるか…。



「こうなる事を予想してたんじゃねーのか」



八神先輩の低い声に吃驚した。
身体が反射的に大きく揺れる。


「予想してたっての!なのに、お前は大丈夫だとかなんとか言ってたろ!!少しは自分が名の知れた男だと自覚しろよ!!」


…え?あんなに人気者なのに…無自覚だったんですか?


先輩の顔色を伺う。八神先輩は何処か視線を泳がしていて、それを睨む難波先輩はすごく怖かった。


< 44 / 344 >

この作品をシェア

pagetop