誓約付き!?期間限定の同居生活~不仲なはずの狼系ドクターは、義妹を寵愛する
【手が届かない兄を想う】
私が帰る頃、まだ雄基君は手術中で、気になりながらも、家で先生からの連絡を待っていた。

もう9時か…
ソファでため息をついていると、玄関のドアが開き、先生が帰って来た。
「天真先生・・・雄基君は?」
「手術は成功したよ。落ち着いているけど、気になるから、シャワーを浴びたら直ぐに病院に戻る」
先生は、小さな袋を冷蔵庫に入れて、バスルームに向かった。

雄基君、成功したんだ・・・良かった・・・
私はホッとして、ソファに腰掛けた。
先生に、謝らないと・・・

シャワーを浴び終えた先生は、出かける準備をした後、私の隣に座って、お水を飲んでいた。
「約束は守ったぞ」
「あの、先生・・・手術前だったのに・・・感情的になってすみません・・・」
「気にするな。俺達医師は、本人だけじゃなく、ご家族にとっても頼みの綱だ。俺達に託すしかない。それを果たす。仕事というよりは、使命だと思っている」
先生を見ると、優しく笑みを浮かべた後、真剣な顔つきになった。

「俺は目の前で消えていく救えない命を、何度も見てきた。その度に心の葛藤が起きる。最善を尽くした、という思いと、本当か?って思いがね」
「先生は、家にいても、いつも勉強してるじゃないですか・・・」
「それでも、何処かで、まだ何か出来たんじゃないかと思うよ。でも、次に助けないといけない患者さん達がいる。いつも、その時の最善を尽くせるように努力するしかない」
先生の切なくて、優しい笑顔に、胸が一杯になった。

「天真先生は、必死で雄基君を助けることだけを考えているのに、あんな事言って・・・ごめんなさい・・・」
「彼は、美来に会えて良かったと思うよ。俺とは違う希望を与えたからね」
私の頭を優しく撫でる大きな手・・・

「美来、ありがとう。彼に生きる希望を与えてくれた。俺には出来ないことだ」
この手で、たくさんの命を救って来た。
そして、たくさん、自分を責めて来たんだ・・・
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