誓約付き!?期間限定の同居生活~不仲なはずの狼系ドクターは、義妹を寵愛する
数ヶ月前、あまりに私の様子がおかしいと思ったお母さんは、たまたま前の職場に、徳関大学病院の医局から派遣に来ていたドクターに声をかけ、事務局内の様子を聞いて、事実を知ったらしい。

「富城さんが勤めていた白波病院が、管理課のスタッフを募集しているから、美来にどうかなぁ?って。直ぐにでもいいって」
「あの白波病院?私、大丈夫かなぁ・・・」
「実はね、もう話をしてくれたみたいで、病院側も是非、来て欲しいって。富城さんの紹介だと知っているのは、院長と事務部長だけだから、変に気を使わなくていいわよ」
「お母さん・・・ごめんね、心配かけて」
「きっと、美来らしく仕事が出来ると思うの。笑顔が可愛いあなたに、戻って欲しいの」
今まで何も言わなかったお母さんが、目に涙を浮かべていた。

厳しい現場を乗り越えて来たお母さんから、泣き言を聞いたことが無い。
そのお母さんが、私のことを心配している姿を見て、決心した。

「ありがとう、お母さん。私、富城さんのご厚意に甘えようかなぁ?」
「凄く喜ぶわ!あなたのことを、娘のように心配してるから。早速、連絡するわね。あっ、そうそう、その病院には」
「あっ、転職サイトの登録解除しないと!ごめん、自分の部屋に行くね!富城さんに宜しくお願いしますって伝えて!」
安心した私は、お母さんの言いかけた言葉を遮って、部屋に戻った。

翌日、早速、事務部長に退職届を出し、お局に退職日までの有休消化の予定と、引き継ぎの話をすると、
「あなたの引き継ぎなんて必要無いわ。全部有休使っても、問題ないわよ」
お局は私の目も見ず、通り過ぎて行った。

そして迎えた退職の日に、最後の挨拶をすると、
「お世話したわね。お元気で」
たったその一言だった。

先輩達と楽しく仕事をした時間、お局に苦しんだ日々。
色々あったけど、もう、ここに足を運ぶことは無い。
これからは、富城さんに恥をかかせないように、お母さんに心配をかけないように、白波病院の管理スタッフとして、頑張ろう。

こうして今、白波病院の前に立つ私は、広い敷地内にそびえ立つ病院へと歩み出した。

まさか、これからの溺愛人生が始まるとも知らずに・・・
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