お邪魔虫にハッピーエンド
中学の頃よりもさらに伸びた身長で、すぐに見つけることができた。
ううん、身長の問題じゃない。
たぶん私は誰よりも早くに、人混みの中で景を見つけられる自信がある。
「景……っ!」
気がつけば、頭で考えるよりも先に体が動いていた。
スマホを握りしめたまま、景のもとに駆け出していて。
本当は正門から出てきたところで声をかけるはずだったのに、こんなに目立つ行動をとってしまっている自分に驚いた。
でも、やっと会える。
その時は嬉しさと高揚感でいっぱいだった。
「…………?」
自分の名前を呼ばれたことで、景の視線が私に向けられる。
その表情は、ほんのりと驚愕に染まっていた。
「……景っ、わっ!?」
久しぶり、元気だった?
それとも「会いたかった」とストレートに言葉にしてしまおうか。
そんなふうに浮かれていた私の頭は、コンクリートのくぼみにつま先が引っかかったことで現実に引き戻される。
(う、うそ!? ぎゃー! 転ぶっ………!!)
ぐらりと足元の自由がなくなって、突然のことに声も出なかった。
なんて大ドジすぎる再会だろう。
こんなはずじゃ……と思いながら、私は転倒の衝撃に備えて身を固くした。
けれど、いつまで経っても痛みはなかった。
「ご、ごめ……」
「――杏?」
耳元で響く声に、ハッとした。
それもそのはず、私は目の前にいた景に抱きつくことでなんとか転ばずに済んでいたのである。
そっと見上げると、懐かしい景の顔が近くにあった。
どうしてここに、と驚いた様子の景。
気づいてくれた。私、最後に景と会ったときから見た目も変わってるのに。すぐに私だって気づいてくれた。
嬉しくて、私は笑みを浮かべる。
「…………久しぶり、景」
思い描いていた再会とは違ったけれど、景の顔を見たらそんなこだわり全部吹き飛んでいた。
回避できない状況だったとはいえ、抱きしめる形で私を受け止めてくれたことに、胸がきゅっと高鳴る。
こうして私は、景と再会した。
そしてこの衝撃の再会は、しばらく生徒たちの間で噂されることになる。
事実は躓いたところを景が抱きとめたくれただけなんだけど、周りからはそう見えていなかったみたいで……。
『アメリカ帰りの帰国子女で編入生で桜葉景の幼なじみが、大胆にも再会のハグをした』──と、騒がれることになるのだった。