シリアル・ホラー
丸夫くんがのんびりと、スローモーションのように腕を上げた。その手が、まりちゃんの肩にぽんと置かれる。
ベチン。
嫌な音が響いた。次の瞬間、まりちゃんの右腕が肩からすぽっと抜け落ちた。
「あはは! 丸夫くんにさわられちゃった!」
まりちゃんは痛がるどころか、ほっぺたを赤くして喜んでいる。丸夫くんはその腕を拾い上げると、まりちゃんの頭のてっぺんにぐりぐりと押し付けた。粘土をこねるような軽い手つきだった。
肉が変形し、骨が噛み合う嫌な音がして、まりちゃんの頭のてっぺんから右腕が生えた。彼女は上に向かって伸びた自分の手を器用に動かしながら、「わぁ、便利!」と狂ったように笑っている。
「ひっ……!」
私は悲鳴を噛み殺し、自転車を放り出して夢中で走り出した。後ろから「みぃ~りぃ~ちゃ~ん、待ってよぉ~」という間延びした声が追いかけてくる。のろまなはずのその声が、なぜかすぐ耳元で聞こえるような気持ちになりながら、私はがむしゃらに自宅へと向かった。
狂っている。みんな完全に狂い始めている。
商店街を駆け抜ける途中、私は見てしまった。買い物をしている主婦の顔の真ん中に、巨大な耳がくっついているのを。犬の散歩をしているおじさんの足が四本に増え、のそのそと奇妙な足取りで歩いているのを。誰もそれを異常だと思っていない。みんな笑顔で、「いいお天気ですねぇ~」「夏休みですもんねぇ~」と、あの丸夫くんのような間延びした口調で会話を交わしていた。
ベチン。
嫌な音が響いた。次の瞬間、まりちゃんの右腕が肩からすぽっと抜け落ちた。
「あはは! 丸夫くんにさわられちゃった!」
まりちゃんは痛がるどころか、ほっぺたを赤くして喜んでいる。丸夫くんはその腕を拾い上げると、まりちゃんの頭のてっぺんにぐりぐりと押し付けた。粘土をこねるような軽い手つきだった。
肉が変形し、骨が噛み合う嫌な音がして、まりちゃんの頭のてっぺんから右腕が生えた。彼女は上に向かって伸びた自分の手を器用に動かしながら、「わぁ、便利!」と狂ったように笑っている。
「ひっ……!」
私は悲鳴を噛み殺し、自転車を放り出して夢中で走り出した。後ろから「みぃ~りぃ~ちゃ~ん、待ってよぉ~」という間延びした声が追いかけてくる。のろまなはずのその声が、なぜかすぐ耳元で聞こえるような気持ちになりながら、私はがむしゃらに自宅へと向かった。
狂っている。みんな完全に狂い始めている。
商店街を駆け抜ける途中、私は見てしまった。買い物をしている主婦の顔の真ん中に、巨大な耳がくっついているのを。犬の散歩をしているおじさんの足が四本に増え、のそのそと奇妙な足取りで歩いているのを。誰もそれを異常だと思っていない。みんな笑顔で、「いいお天気ですねぇ~」「夏休みですもんねぇ~」と、あの丸夫くんのような間延びした口調で会話を交わしていた。