『あのね、わたし、まっていたの』 ~誰か声をかけてくれないかなって~ 【新編集版】
 校庭を横切っていると、バットを持った建十字とサッカーボールを持った横河原に出くわした。
 二人はわたしと用務員さんの顔を見て、ん? というような表情になった。
 でも、何も言わずすれ違った。
 
 図書館に寄ろうかと思ったが、本を読む気にはならなかったのでまっすぐ家に帰った。

 部屋に入ってランドセルを置くと、涙があふれてきた。
 ベッドに横になって掛け布団を頭から被って声を出さずに泣いた。
 
 お母さんには何も言わなかった。
 疲れて帰ってくるのがわかっているのに心配をかけたくなかった。
 普通の振りをして晩ご飯を食べてテレビを見た。

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