桜の華 ― *艶やかに舞う* ―
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私は、

自分のことを疎ましく? 
しかも怖がってる? 風な両家の4人を一瞥してから
先生に答えた。


「こちらで一週間ほど療養させていただこうかと思い……」
と私が先生に最後まで話をする前に母親が口を挟んできた。


「桃、特にこれといって悪いところがないのなら早めに帰ってきてほしいんだけど。
思い出せないかもしれないけどあなた、小さな子がいるのよ」



「えっ、私、子持ちなの?」
驚いたぁ~。
心底私は他人事のように驚いてしまった。

じゃあよけい、ここでゆっくりするわー。

だって今ここでゆっくりしないと、この先絶対一人のゆっくりできる
時間なんてないと思うから。



「ごめんなさい、まだ頭が痛くて。
このまま家に帰って私までお荷物になったら、お母さんに申し訳ないから
やっぱり一週間こちらでお世話になります」


私がそう言うと母親らしい人が困ったような悲し気な表情をした。


『子供の世話は大変でしょうけどあなたの孫なんだから頑張れー』

胸の内で母親らしき人物に応援メッセージを送っていると、父親らしき人が
私の意志に賛同してくれた。


「定子、桃は無理してこうなったのだからここは桃の意志を
尊重してやることにしよう」


そしてそれから父親らしき人が夫の義両親の紹介を始めた。


「桃、こちら水野さん、俊くんのご両親だよ。
覚えてないかい?」


「俊、って人がもしかして私の夫っていうこと?」

「そうだ、俊くんはお前の旦那さんだ」

「それはわざわざ来ていただいたのに、覚えてなくて申し訳けありません」

「桃ちゃん、ほんとに何も覚えてないの? 最後に俊に会った時のことも」

「……」

「よさないか。桃さんは精神状態が今は普通じゃないのだからその話は
あとでいいじゃないか」

「でもちゃんと会話できるのにほとんど何も覚えてないなんて、信じられないわ」


姑だという人の話を聞いているうちに、彼女の顔のことは少し思い出せそうな気がした。


でも私の夫、俊って人のことはまったく思い出せなかった。
その彼はその後どうなったのだろう。

傷は癒えたのだろうか?
それとも手術になってまだ入院したままだとか。


そう思うものの、私は姑たちが息子について何も言わないのをいいことに、
私が傷つけたという夫だという人のことは話題に持ち出さなかった。

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