熱の城
わたしは、あわてて立ち上って、鈴木さんに頭を下げた。
「あっ、……あぁ、こっちこそ、突然驚かせてごめん」
面食らったような、鈴木さんの声が頭上から降ってくる。
もうサイアク……、せっかく鈴木さんに会えて、わたしからきちんと挨拶したかったのに、恥ずかしくて顔が上げられないよ……。
わたしは、火照る頬を、両手で隠すように冷やした。
「藤乃さん、ちょっといい?」
「えっ? ……あっ、はい?」
言われて、顔をゆっくり上げると、目の前に名刺サイズのカード。
『カフェ&ダイニング フルール』
「……?」
「これから一件、取り引き先と打ち合わせがあるから、ランチにここで今後の打ち合わせをしよう、12時までには連絡する」
「あっ、はい……」
そう言って、鈴木さんはコートを引っ掛けると、思い出したように一瞬止まって、こちらを振り返った。