熱の城

「……」


 困ったな……。思い出すたびに、顔が熱くてドキドキする心臓が落ち着かない。本当に困る、ただでさえ仕事が遅いのに。

 はぁ~、と何度も深呼吸をして、平静を保つ。

 意識しすぎて、まともに仕事にならなかった午前中。

 それでもわたしは、つとめて意識を集中させて、昨日からもらっているファイルの仕事を、なんとか一冊、鈴木さんの電話がかかってくる前に終わらせることが出来た。


 そして…―――


 待ち合わせたダイニングに、今、わたしは座っている。


「藤乃さん、お待たせ」


 わたしが席について数分たった頃、ちょうど鈴木さんが店に現れた。


「あっ、鈴木主任お疲れ様です、わたしも今来た所です」


 立ち上がろうとした、わたしを片手で制して、彼は、ゆっくりと向かいの席に座る。

 その仕草が、流れるように自然で、わたしの鼓動がまた速くなった。



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