熱の城

 確かに、彼が出張に出ている間に、なんとかこの資料を仕上げなければならなくて、時間ギリギリでけっこう大変だった。だから、褒められるのはとても嬉しい。


「この短期間に、よくやったな! 藤乃」


 目の前には、キラキラと優しい鈴木主任の笑顔。


「……」


 わたしは、恐る恐る彼の手に、ハイタッチして見せた。


「こちらこそ、ご指導ありがとうございました」


 嬉しい……。

 初めての専属補佐、初めての会議資料作り、もちろん初めての会議中バックアップ。

 緊張して、不安で仕方なかったから……。

 仕事でこんな風に褒められるのも、達成感と高揚感を感じたのも、初めてだ。


「……っ」


 泣きそう……。


「じゃあ、ご褒美に今日は、前に約束した、とっておきの店に連れて行こうか?」


 えっ?

 その笑顔があまりにも魅力的だったから、わたしは、返事も出来ずについ、彼に見とれてしまった。



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