熱の城
そして…―――
わたしは助手席のシートに座り、シートベルトを締めながら、隣に座る鈴木さんをチラッと盗み見た。
「……」
薄暗い車内に、聞きなれない洋楽の歌が流れてている。黙ってハンドルを握る彼の横顔が、さっきまでとは別人のようで、なぜか居心地が悪い。
「藤乃の最寄り駅は、何処だっけ?」
鈴木主任が、急に前を向いたまま話し出したので、ドキッとした。車内だからか、鈴木さんには、この空間がとても狭そうに見えてしまう。彼が大きな人だと改めて感じてしまい、無意識に緊張している自分がいた。
「? 藤乃?」
「あっ、すみませんA駅です」
「あぁ、あの辺か……」
「知ってるんですか?」
いつも説明するのに時間がかかる町だから、タイガーが知っているのが不思議だった。