熱の城

 これじゃあまるで……。


『藤乃?』

「……」


 これじゃあ、わたし。


『……藤乃、聴いてる?』

「は、はい!」

『おいで? ……俺が会いたい』


 あっ……。

 優しく落ち着いたタイガーの声に、胸の奥がキュウッとしなって、まるで魔法にかかったように熱が、宿る…―――


『藤乃?』

「……っ」


 わたしは、スマホを耳に押し当てたまま、ギュッと目を閉じた。もう、ダメだ……、この引力に抗うなんて、出来ない。


『藤乃、……おいで?』

「―――…っ、はい」


 電車に乗って、会社の最寄り駅まで、改札をもどかしい思いで並んで通り抜ける。熱に浮かされたように、10分もかからない道を、走って、走って……。

 無我夢中で彼がいる、会社の向かいのカフェに向かった。



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