熱の城

 心配して、手を差し伸べてくれる彼の大きな手が、支えるようにわたしに触れた。


 瞬間…―――


 心の奥でかけていた、最後の枷がパチンと外れた。ごちゃ混ぜになった感情が一気にあふれ出す。


「……だ、大丈夫じゃ、ないです!」


 胸の奥が、熱い。自分の声が、震えているのがわかる。


「藤乃?」

「全然、大丈夫じゃないです!!」


 あなたの残した熱が、こんなにも熱くて、苦しくて……。


「―――…頭の中がいっぱいで、仕事が手につかなくて困りました!」

「……」


 驚いたように、目を見開いてわたしを見る鈴木さん、恥ずかしい、止めたくてももう、自分では止められない。


「同僚に変だって心配されて、KISSマークも指摘されて、彼に会っても、鈴木さんの顔が頭から離れなくて、困って、苦しくて……」


 目の奥が熱い。涙が、あふれて止まらない。



< 85 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop