神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
当然、イレースは怒った。

「社会見学は遠足じゃない」と。

お花見しておやつなんか食べてる暇があったら、一つでも多くの職場訪問をした方が良いと。

イレースの言うことが全面的に正しい。

しかし、シルナは言うことを聞かなかった。

絶対におやつタイムだけは譲りたくなかったらしく、めちゃくちゃゴネまくった。しつこく食い下がった。

最終的には、泣き喚いた。

「やだ〜!おやつ食べるおやつ食べるおやつ食べる!!」って。

さながら幼稚園児、いや幼稚園児の方がまだ聞き分けが良いだろう。

それをおっさんがやってるんだから、気持ち悪いなんてもんじゃあない。

シルナの必死の訴えに、ついにイレースが折れた。

折れたっつーか、匙を投げた。

「そこまで言うなら、もう好きにしなさい」と。ブチギレで。

と言うか、あまりにみっともない学院長の姿を、これ以上見たくなかったのかもしれない。

そりゃ目の前でおっさんが駄々をこねたら、気持ち悪くて見ていられないよ。

結局、シルナの粘り勝ち。 

生徒とチョコレートに対する凄まじい執着が、見事勝利を収めたのである。

…お前は恥を知れ。

で、無理矢理我を通したシルナは、うきうきわくわくと、遠足…じゃなくて、社会見学の準備をしている。

準備って言っても、ほぼチョコレートの準備だけど。

「こっちがおやつのリュックでー…。こっちのちっちゃいリュックにしおりを入れて…」

まさかの、リュック二つ持ち。

背中と胸、両方に抱えていくつもりか?

「あっ、そうだ!チョコビスケットも一緒にも、…ぷぇっ…」

「は?」

うきうきと準備していたシルナが、いきなりピタッ、と止まった。

どうした。心臓発作か。

と、思ったが。

「…くしゅんっ!」

…ただのくしゃみだった。

「紛らわしいことをするな!」

「えぇっ?くしゃみしただけなのに怒られた…!?」

紛らわしいくしゃみするからだろうが。

しかも。

「…くしゅっ、くちゅんっ!」

おっさんの癖に無駄に可愛いくしゃみを、合計三連発。

「ぐずっ…。…何だか今日は、よくくしゃみが出るなぁ…」

「悪口でも言われてるんだろ。多分イレースに」

「酷い!」

あのパンダ、動物園に寄贈してやりましょうか、とか言ってるんだろ。

無理もない。

しかし、能天気なシルナは。
 
「よし。こんな時は…チョコを食べて元気を出そう!」

とか言って、お気に入りのトリュフチョコをぱくり。

…元気な時でも、いつもチョコ食ってんじゃん。

「あぁ〜やっぱり美味しい!」

「あ、っそ…」

幸せな奴だよ。




…しかし。

社会見学当日の朝、シルナはとんでもないことになる。
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