神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
風邪編

side羽久

ーーーーー…シルナの「それ」は、とある学校行事が行われる直前に起きた。





「ふんふんふーん♪楽しみ〜、楽しみ〜♪」

「…」

シルナはうっきうきで、あらゆるチョコレートをリュックに詰め込んでいた。

…大きなリュックが、チョコレートでぱんぱんになっている。

夢のチョコレート福袋かな?

「…お前、他にも持っていかなきゃいけないものがあることを分かってるか?」

「勿論!遠足のしおりとー、水筒とー、お弁当持っていかなきゃね!」

「…」

こいつ、完全に遠足だと勘違いしてやがる。

イレースを呼んでこい。一発、雷を落としてもらおう。

今、シルナが何をしようとしているのか説明しよう。

来週、イーニシュフェルト魔導学院ではとある学校行事が行われる。

遠足ではなく、社会見学だ。

毎年、イーニシュフェルト魔導学院の五年生が、この時期に行くことになっている。

行き先は、学院OBの職場である。

だから社会見学と言う名の、職場訪問だな。

五年生ともなると、そろそろ学院生活も終盤。

卒業、そして就職について、本腰入れて考え始めなければならない時期だ。

そこで、この大事な時期に学院OB、OGの職場訪問をして、将来の選択肢の幅を広げてもらおうという趣旨である。

毎年、もっとも多くの就職者を出す聖魔騎士団の訪問は行っているのだが。

この社会見学では、聖魔騎士団以外の職場訪問を行う。

聖魔騎士団以外の将来の選択肢があるのだということを、生徒に教える為である。

聖魔騎士団だけが、魔導師の活躍する場所ではないからな。

そこで毎年、聖魔騎士団以外の職場に就職した卒業生に連絡を取り、見学訪問の依頼をしているのだ。

…とはいえ。

この社会見学は、社会見学と銘打ってはいるものの、半分は遠足である。

言うまでもないが、これはシルナの意向である。

しばらく前の職員会議で、社会見学の行き先を決める時。

散々、揉めに揉めた。

主に、シルナとイレースで揉めた。

イレースは、午前中に一件の職場訪問を、昼食休憩を挟んで、更に午後にまた一件の職場訪問。

それから帝都にある、ルーデュニア聖王国魔導科学歴史博物館、という国立博物館を訪問する、というプランを提案した。

この国立博物館訪問は、イーニシュフェルト魔導学院の生徒として、この国の魔導の歴史を学ぶと同時に、職場訪問の一環でもある。
 
というのも、博物館の学芸員をしているのが、ウチの卒業生だからだ。

従ってイレース案では、1日に三箇所の職場訪問を行うということになる。

俺も、天音やナジュも、イレース案に賛成した。

唯一異論を唱えたのがシルナである。

シルナ案は、午前中に一件の職場訪問を行う、というところまではイレース案と同じだったが。

問題は、午後。 

午後はすぐに国立博物館に行って、それが終わったら、大きな花園を併設する自然公園に行く。

で、そこでビニールシートを広げて、みんなで花を見ながら、ジュースを飲んでお菓子を食べる。

…っていうのが、シルナ案。

こいつは、社会見学と遠足を混同している。
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