神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
で、週末に一緒に花火大会に行くことが決まった、全体会議の翌日。




…その日、珍しく、ベリクリーデが俺の部屋に来なかった。

いつもなら、まだ朝も早いうちから、ベリクリーデは俺の部屋に突撃してきて。

「じゅーりーすー、あーそーぼー」なんて、幼稚園児みたいなことを言うのだが。

今日は、午前が過ぎて午後になっても、ベリクリーデが来なかった。

これは珍しい。

…これを「珍しい」と思ってしまう辺り、俺が毎日どれだけ苦労しているか分かってもらえるだろう。

まぁ、今日は特に外任務もないし。

一日中書類とにらめっこしてるだけだから、別にベリクリーデが来ても来なくても、どっちでも良いんだが…。

…でもさ、来なかったら来なかったで、気になるじゃん。

だって、毎日来てるんだぜ?

それなのに今日に限って来なかったら、「何かあったのかな?」って思うじゃん。

午前中は、そわそわしながらも何とか我慢したが。

午後になってもベリクリーデが姿を見せなくて、さすがに我慢出来なくなってきた。

もしかして、部屋の中で倒れてたらどうしよう?

それでなくても、俺が目を離したら、すぐに突拍子もないことをする奴なのに。

畜生。来たら来たで世話するのが大変なのに。

来なかったら来なかったで心配になるのだから、あいつは存在そのものが卑怯だ。

お陰で、書類仕事がまったく進まない。

「…あぁ、もう」

ついに痺れを切らした俺は、自分の席から立ち上がった。

そっちが来ないなら、こっちから確かめに行くしかないじゃないか。

俺は、結局全然進まなかった書類仕事を放り出し。

足早に、急いでベリクリーデの部屋に向かった。

「おい、ベリクリーデ。いる、うわぁっ!?」

「あ、ジュリスだ」

「あぁ。ジュリスだな」

部屋の中には、ベリクリーデと、そしてもう一人。

俺の天敵である、天使のクロティルダだった。

その二人が、あろうことか…。

「な、何やってんだっ!?お前らっ…!?」

ベリクリーデは、着替え中だった。

クロティルダは、そんなベリクリーデの着替えを手伝っていた。

「お着替え」

「手伝ってくれと言われてな」

お前は手伝えと言われたら、女の着替えでも躊躇わないのかよ。

しかも、ベリクリーデの、この格好って…。

「…お前ら、一体何しようとしてるんだ?」

「ねぇねぇジュリス、似合う?」

ベリクリーデは、その場でよたよたしながら、くるりと回って見せた。

良いか、女が「似合う?」と聞いてきたら。

例え、内心似合ってないと思ってても、「似合うよ」と言ってあげるもんだ。

…だけどな。

今ばかりは、お世辞にも似合ってるとは言えなかった。

「…何?その格好」

俺は、真顔でベリクリーデにそう尋ねた。
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